「贅沢な世界の中に・・・。」   神久夜サマ
「風の傷!!!」
犬夜叉が叫ぶ。大地が割れる。それを避ける奈落。両者共、息があらかった。
「風の傷!!!!」
今度は当たった。奈落が消える・・・。
「や・・・った・・のか?」
疲労の果てにいる犬夜叉は意識をもうろうとさせながら
ひびの入った地面に倒れこんだ。
「犬夜叉!!」
少女が駆けてくる。少女の名は日暮 かごめ。
それと共に妖怪退治屋の珊瑚、
手に呪いの風穴を開けられた弥勒も駆け寄ってきた。
「やった・・ようですな・・・。」
「ああ。そうだね。」
「弥勒様!」
「弥勒!よかったじゃねえか!」
弥勒の風穴は、みるみるうちに消えていった。
すなわちそれは、奈落の消滅を意味した。

一方、ここでも奈落の消滅を喜ぶ者たちがいた。
「ふん・・・。悪党も悪運尽きたって事だな。」
「・・・神楽・・・。心の臓が戻った・・・。」
神楽と神無である。神無や神楽は前々から開放されたがっていたので、
顔には出さないが、喜びは大きかった。
すると、横で琥珀という名の珊瑚の弟であり、
奈落の手下である11の少年がうなりだした。
「どうした!?琥珀!」
神楽が心配そうに覗き込む。
「父上!!姉上!!」
どうやら、あの悪夢を思い出したらしい。
かがみこむ琥珀を見て、仕方ないというように神楽がため息をついた。
「神無、お前も乗っていくか?」
「いい・・・。少ししたいことがあるの・・・。」
ふーん・・・。といわんばかりの顔で神楽が神無をにやついて見た。
「そうかい・・・。それじゃよろしくやってるんだな!!あたしは、珊瑚の所に
こいつを届けてくるよ!!せいぜい命を落とさないようにやるんだな!!」
神楽は、ゴッと風の音をさせ犬夜叉一行のいるところへ向かった。

「よお、犬夜叉!!」
上機嫌の神楽が犬夜叉一行の前に立ちはだかる。
「なんだ!?神楽!敵討ちでもしようってのか!?」
「おっと、あいにくあたしはそれほど奈落に忠実じゃないんだよ。
それより妖怪退治屋の珊瑚っていたろ?届けもんだぜ。
何か急に叫びだしたからお前の所に行きたがってんじゃねえかと思ってな。」
神楽の羽から、11の少年琥珀が、飛び出してきた。
「こ、琥珀!!」
珊瑚が叫ぶ。
「姉上!!お、俺、父上や皆を・・・。」
そういうと、また泣き出す。珊瑚の胸の中で、琥珀は延々と泣いていた。
それを見て、不満に耐えているものが一人。弥勒である。
しかし、父や皆を殺した記憶で、心がすさんでいるのだと自分に言い聞かせ、
その状況を見守っていた。
すると、後ろから聞き覚えのある声。何であいつが!!
とっさに犬夜叉は、刀を構えた。
しかし、その声は、止まる事無くこちらに近づいてきた。
「犬夜叉―vv」
蛇骨である。とっくの昔に葬り去った蛇骨が何故ここに・・・。
「犬夜叉!」
蛇骨は、息をはあはあさせながら、2メートルぐらい前で止まった。
犬夜叉は、警戒をしながらたずねた。
「何でお前がここにいるんだ!」
「あ、あぁ。神無が蘇らせてくれたんだ。
罪もねえ奴らを殺さないのなら蘇らせてやるってな。
人でも妖怪でも傷つけた場合は、容赦なく首の四魂のかけら取るってさ。
喧嘩なら勝手にやってろって言ってたけどな。」
しかし、何故神無は蛇骨を蘇らせたのか。
弥勒は、それを神楽にたずねた。すると神楽は、
「うーん・・・。何つーかこの頃神無の奴、あたしより年上になってるんだよな・・・。」
「なに?それ?どういう意味?」
かごめが聞いた。神楽は説明を続けた。
「ほら、神無って、あたしより餓鬼みたいな容姿してるだろ?
それがこの頃あたしより年上の容姿してるんだよ。」
あぁそういえばと、蛇骨が言う。
「それはそうと神楽。」
「あ?なんだ?法師?」
「貴方は奈落から解放されたのですよね?」
「あぁ。」
「ならば私の子を産んではくれませんか?」
「「「このスケベ法師!!!!!」」」
神楽の扇で頭を叩かれ、珊瑚の飛来骨で腰を直撃され、
かごめの軽蔑の目で体も精神もぼろぼろになった弥勒は、
その後は、珊瑚が目の前で琥珀をあやす光景に深く傷つきながら、
珊瑚に何分もの説教をされたのでした。

弥珊から離れて、蛇骨。
「なあ、犬夜叉。」
「なんだ?」
「2度目に死ぬときは出来なかったけどさ。両手ついたしv抱いてやろーかv」
「「!!!!!!」」
かごめと犬夜叉に危機が迫った。
「なあ、犬夜叉?「蛇骨様。優しく俺を抱いてください。」って言えば、抱いてやるぞv」
「だ、誰が言うか!!やっぱりてめえ!地獄に返してやる!!!!」
犬夜叉が叫んだとき。
「『蛇骨様。俺を優しく抱いてください。』・・・。」
神無がそこに立っていた。
勿論気配の無い神無には気付くことが出来ないが、
何よりその場に居た者の全員が驚いたのが、神無の身長。
神楽は別に驚いてない様子だが、
蛇骨の身長より少し低いほどの身長があった。
そして、神無の発言。これが何を意味するのかは、
神無と神楽の姉妹にしか分からないのであった。

その沈黙が、終わるきっかけ。それはスケベ法師の、
「私の子を産んでくれませんか。」
その後スケベ法師がどうなったかは言うまでも無い事。

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「贅沢な世界の中に・・・。ぱあと2」   神久夜サマ
犬夜叉達が奈落を倒してから2日目。
妖怪退治屋の村を出来るだけ早く復興したいと珊瑚がせかすので、
とにかく、皆、退治屋の村に住んで焼け跡を直したり、
家を造ったりと仕事に励んでいた。

こちらは、はりのあるかごめの声。
「犬夜叉ー、昼ご飯出来たわよー!!」
犬夜叉が、かごめの所に来た。
「おう、かごめ、これはなんなんだ?」
不信そうに犬夜叉がかごめに問う。
「カレーよ。文句ある?」
つんと横を向いたかごめ。
彼女が犬夜叉はカレー嫌いだと分かってカレーを作ったのには訳がある。

こちらは、痛々しいまでのパンッという音。
「もう、知らないよ!法師様なんか!!」
「待ちなさい珊瑚。なぜ、そんなに怒っているのです。」
彼女が、いつもより怒っているのにも訳があった。しかしこれは、別のお話。

それは、昨日の事。
「ほんっとうにごめん!!でも、早く村を復興したいんだ。
夕暮れまでに村に着いてたら、明日から取り掛かれると思って・・・。」
「気にするな珊瑚。」
「そうよ、珊瑚ちゃん。それに、迷惑だなんて、ぜんぜん思ってないから、頭を上げて?」
「そうですよ。珊瑚。それに珊瑚が慌てて来たから、かごめ様の料理が食べられるんですから。」
「そうじゃ。そうじゃ。」
犬夜叉一行が奈落を倒し、ゆっくり休む暇もなく珊瑚は妖怪退治屋の里に行った。
珊瑚一人じゃ大変だろうという事で犬夜叉たちはついてきたのだが、
珊瑚は、皆に迷惑をかけていると思ったらしく、土下座をしてまで謝る始末。
「本当に、悪いね・・・。」
すまなそうに珊瑚が言うものだから、皆は珊瑚に説得を続けている最中だった。
その時、
「犬夜叉ーvvv」
また、蛇骨の声。
「けっ。亡霊が!!また出やがって!!」
犬夜叉が、刀を構えた瞬間、思いもよらぬ出来事が起こった。
「蛇骨!!」
と言って、上から白い影が落ちてきた。
それは蛇骨の上で着陸し、笑った顔で抱きついているではないか。

あまりの出来事に周囲の者は皆、唖然としていた。そう、白い影は神無だったのだ。
抱きつかれた本人、何が起こっているのか把握するまでに3秒かかった。
「な、なんだ〜?おい、女!!離れやがれ!!」
必死に神無を引っぺがそうとする蛇骨と、絶対に離れまいと必死になる神無。
4人と1匹は、状況把握に34.195秒かかった。
犬夜叉は鈍感な為、
蛇骨は女に興味が無い為、
今でも分かっていないだろう。
神無が蛇骨を好きになったと言う事などは。
すると、蛇骨が救いの手を求めてきた。
「おい、犬夜叉!!助けてくれたっていいだろ!!」
「けっ。知るかよ。いい気味だぜ!」
とにかく、危険性がなくなったのだろうと察した犬夜叉が、刀をしまった瞬間。
「たすけねぇと・・・。」
そういった瞬間、蛇骨は神無の手からすり抜け、犬夜叉のほうに向かってきた。
すると、犬夜叉は「げっ!!」と一言言うと、森の中へ駆け込んでいった。
勿論、蛇骨も犬夜叉の後を追って。そして、神無も蛇骨の後を追って。

そして、急な展開に唖然としていた4人と1匹。
「・・・一体なんでだと思う?珊瑚ちゃん・・・。」
「・・・さぁ・・・。」
「・・・まったく女子の心というものは分かりませんな。」
「まったくじゃ。」
キュウと、同意するように雲母も鳴いた。
「ま、あの様子じゃ、みんな当分帰ってこないでしょう。」
「弥勒様の言う通りね。じゃ、夕ご飯のしたくでもしてようかな♪」
鼻歌混じりにかごめがいうと、おらも手伝うと七宝は言った。
「あの、かごめちゃん、悪いんだけど琥珀を見てくるよ。
一人にしてくれって言ってたけど、どうも気になってさ。」
「では、私も。」
と、言って、弥勒と珊瑚は雲母に乗り、琥珀の居る川原に行った。
そこで、珊瑚達は、妖怪に出会うのだが、これもまた別のお話。

「じゃあ、七宝ちゃん。これに火をつけてくれる?」
「あぁ!『狐火!!』」
かごめが指差した薪には、みるみるうちに火がついた。
「ありがと、七宝ちゃん。」
「ところでかごめ、今日は何を作るんじゃ?」
「炒飯よ。」
「ちゃーはん?なんじゃ、そりゃ。」
「七宝ちゃん達でいう、大陸の食べ物よ。」
「ふーん・・・。」
なにやら、考える風をしてかごめの料理を見ていたが、
ふと思い出したように、言った。
「犬夜叉は、何処まで行ったんじゃろうなぁ・・・。いくらなんでも遅すぎるぞ。」
「そうよね。弥勒様はああ言ってたけど、5分ぐらいで戻るはずなのに・・・。
おかしいわ・・・。なにかあったんじゃ・・・。」
出来た炒飯を盛り付けながら、かごめは七宝に言った。
「七宝ちゃん、ちょっと私、犬夜叉を見てくるわ。大丈夫。
心配ないから、七宝ちゃんは、炒飯を見ててね。」
分かったの意で、しっぽうは、うなずいた。
「じゃ、行ってくるね!」
「気をつけてなー!!」
「うん!!」

かごめが森の中に入っていくと、蛇骨と神無がのびていた。
どうしたのかしらと、かごめは頭を傾けた。
すると、目の前に結界があった。
はじかれると思って手を恐る恐る伸ばしてみたが、はじかれるどころか、
難なく結界の中に入り込んだ。
これはまさか。
急いで森の中に、出来るだけ静かに駆け込んだかごめは、
予想通りの風景を目の前にした。
桔梗と犬夜叉が話している。楽しそうに。
「ふふっ。なるほどな。」
「何がなるほどなんだよ。桔梗。」
「いや。別に。それより、そろそろ戻ったほうが良いのだろう?早くいけ。」
「?」
「気づかんのか?」
「なんだよ?あ、なあ、それより、お前も来いよ。」
「どこへ?」
「珊瑚の村へだよ。」
「さあ。どうしたものか。良いのか?かごめ。」
「んな!?」
犬夜叉は振り返った。そこには、かごめの姿があった。
しかし悲しむ様子もなくこちらに近づいてくる。どちらかというと、微笑みながら。
「いいわよ。桔梗。」
「そうか。」
桔梗とかごめが微笑みあうのをみて、犬夜叉が安堵したのもつかの間。
「おすわりっ!!」
かごめの声が響いた。
犬夜叉が地面にたたきつけられる。
「な、なにしやがる!!」
そういう犬夜叉にかごめはいっそう腹を立てた。
なによ!私の匂いに気づかないほど夢中になってたっていうの!?もう、
「知らない!!知らないわよあんたなんか!!」
思っていたことが、途中から声に出てきた。
なんだか馬鹿みたいに泣けてきてその場に座り込むと桔梗がなでてくれた。
「では、帰るか。」
「桔梗・・・?」よたよたと歩くのを、桔梗が肩を貸してくれた。
「ありがと、桔梗・・・。」
かごめがそういうと、
「おい、待てよかごめ!一体なんなんだよ!!」
起き上がった犬夜叉が、追いかけてきた。
かごめは、また言霊を言おうと思ったが必要はなかった。
「ふせ。」
横で桔梗が言った。
かごめの言霊と同じ効果があるのか、犬夜叉が地面に叩きつけられた。
「犬夜叉。少し反省するんだな。今のは、お前が悪い。」
そう、納得のいかない言葉を残されて、犬夜叉は考えた。
女って一体・・・?

犬夜叉が帰ると、皆そろっていた。
犬夜叉に気づいた弥勒が、
「おや、お前、桔梗様やかごめ様に何をしたのです。」
「おめぇこそ、左の頬に珊瑚の手の型付けやがって。」
犬夜叉は、かごめが桔梗と仲良さそうにしているのを、
弥勒は、珊瑚が琥珀と仲良さそうにしているのを、
皆が寝付くまで無言で見守っていたが、二人して無言であることをつぶやいた。

それはそうとして、つまり、こういう訳でかごめはカレーをつくったのである。
「だからぁ、俺は食べられねぇって言ってんだろ!!」
「じゃあ、食べなきゃいいじゃない。」
「けっ。そうかよ!」
犬夜叉は、後ろを向いた。
「冗談よ。」
声がしたかと思うと、かごめが干し芋を差し出していた。

「だから何をそんなに怒っているのです、珊瑚。」
「!わかってないの!?」
左の頬に珊瑚の手の型をつけ、どうしたものかと、ため息をついたとき、
急に珊瑚が振り返って、
「わからないなら、もういいや。」
と、笑っていた。

そして、二人は昨日の夜のように同じ事を同時につぶやいた。

「女ってわけわかんねぇ。」

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「贅沢な世界の中に・・・。ぱあと3」   神久夜サマ
琥珀が、帰って来た。
琥珀を私の元に取り返す方法。それは、一つしかないと思っていたけど・・・。
そう、殺すしか。
でも、生きて帰ってきた。
そう、たとえ四魂のかけらで生きながらえているだけだとしても。
生きて帰ってきたことに変わりはない。
つらい過去を思い出させてしまったけど・・・。
でも、その代わり私がつらい事など思い出せないくらい
琥珀の心を幸せで一杯にしてやるんだ。
そう決めていたのに。

「姉上!お、俺、父上や皆を・・・。」
泣いて私にすがってくる弟は、私のことを「姉上」と呼んだ。
あいつに操られていたときとは違う、暖かいまなざしをしていた。
その琥珀を見て、明日からすぐに村を復興させようと思った。
でも、おかしなことに気づいてしまった。

法師様が不満そうな顔でこっちを見ている。
琥珀をにらんでいるのだろうか?
どうして?
法師様に限ってそんな事はない・・・そう信じたい。
でも、不安はこみ上げてくる。
肉親を殺した子だと、軽蔑しているのではないだろうか。
一番、琥珀を心配してくれていると、そう信じていたのに・・・。

「このスケベ法師!!」
そう叫んだときも、悲しみは消えなかった。
悲しみを怒りでもみ消しても、まだ残った。

村に戻ると急に琥珀がこんな事を言った。
「姉上、俺を、一人にしてください。少しだけ。すぐ、戻ります。」
琥珀がそういったから、私は川原に琥珀を一人置いてきたけど、
やっぱり心配になって、見に行く事にした。
かごめちゃんと七宝だけであそこに居るのは危険かもしれないけど、
かごめちゃんには破魔の矢があるし、
七宝だってあれで妖怪なんだから大丈夫だろうと自分に言い聞かせて。
弥勒様を連れて行くのは嫌だけど、もしかしたら私が誤解しているだけだったら・・・。
変な気分になって、成り行きのまま、弥勒様を連れて行くことにした。

川原に行くと、琥珀が居た。
でも、様子がおかしい。
戦闘服も着て、鎖鎌も持って。
一体どうしたというのだろう?
雲母に降りろと命令すると、目の前には大毒蜘蛛が。
奈落・・・!!
いや、違う。ただの妖怪。ただの蜘蛛の妖怪だ。
奈落は今朝、犬夜叉が葬り去ったばかりではないか・・・!
私は、首を横に振って意識を保とうとした。
まず、琥珀!
善戦している。妖力も弱い毒蜘蛛だ。これなら、倒せるであろう。
琥珀には、一人で妖怪を倒すというのは初めてだろう。
私が手を出したらがっかりするかもしれない。
危険なときにだけ手を貸してやろう。
「手を貸さなくてよいのですか?」
だから、私に法師様が問うたとき、大丈夫。見守っていてあげての意で首を横に振った。
法師様もそれを分かってくれたらしい。
「そうですか。」
と言っただけで、穏やかな目で琥珀を見ている。
よかったと思う。自分の勘違いだったのだと。そして、ふと思った。
まるで母親のような感情だと。
ふふっと、失笑したそのとき。
弥勒様が飛び出た。
琥珀を見ると、毒蜘蛛の糸に絡めとられている。
「うわぁああぁあぁあぁあ!!」
と、悲痛な声を出しながら。
しまった!!でも、思ったときには琥珀は法師様に助けられていた。
毒蜘蛛は、頭から真っ二つに割れている。
錫杖は毒蜘蛛の血で真っ赤になっていた。
「ありがと。法師様。」
本当に感謝していた。
そして、琥珀を抱きしめた瞬間。
いやな感じがした。
ふと、顔を上げると法師様がこちらを睨んでいる。
間違いなく。
確信してしまった。
法師様は琥珀を軽蔑していると。
悲しみで、もう、自分が何をしているのか分からなかった。
パンという音がした所まで。目からしょっぱい水がこぼれた所まで。
それから先は覚えていない。ボーっとしていた。
ただ、琥珀に心配をかけてはいけないと笑っていた。

次の日。
村へ行った。
私と法師様とで。
妖怪退治と、食料を分けてもらうだけの為に村へ降りてきたというのに。
法師様はまた女たちと遊んでいる。
置いていくわけにもいかず、いらいらしながら待っていた。 
やっと法師様が帰ろうかというときに、
「今日は琥珀が居ないので水入らずですね、珊瑚。」
と、法師様がつぶやいた。
かっとなって法師様の頬を思い切り叩いた。
「もう、知らないよ!法師様なんか!!」
やっぱり、琥珀の事を・・・!!ずんずんと前を行く私に法師様が呼びかける。
「待ちなさい珊瑚。何をそんなに怒っているのです。」
法師様も私を追って、ずんずんと大またでくる。
「だから何をそんなに怒っているのです、珊瑚。まったく。
村の娘と遊んでいただけではないですか。それをなぜ軽蔑のまなざしで見て、急に頬を叩くのです?」
「!分かってないの!?」
だが、それを言ったとき珊瑚はピタと止まった。
・・・軽蔑のまなざし・・・?
私、村の娘に法師様が囲まれているとき、嫉妬していたよね?
それが、軽蔑のまなざしとなっていたの?
それじゃあ、もしかして。
法師様は嫉妬していたの?琥珀に?
そう思うと珊瑚の心から何かが抜けていった。
「分かってないなら、もういいや。」
そんな言葉が自然と口から出た。
そして、その後法師様がつぶやいた言葉を私は知ってる。
でも、その言葉少し使わせてもらうよ。

「恋って訳わかんない。」

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