「時の流れ〜永遠に 前編」   犬乃丸サマ
【解けた結び目】

犬夜叉「そもそもお前がなぁ〜!!!」
かごめ「なによーー!!あんただって!!!!」

空一面は蒼に染まり
日は丁度真上まで達している
小鳥のさえずりが聞こえる中
2人の大声は辺りに響かせる

いつものケンカ…
とは言えない雰囲気だった
ケンカをするほど仲がよい…
とよく言われているが
今回はそうとは言えない状態だった

桔梗が絡んでる…

この条件があるだけで
すべてが一転する

犬夜叉とかごめのケンカはたいがい一つの言葉で
終わりを告げる
今日もまた…
かごめ「おすわりーーーーー!!!!!!」

かごめの言霊が発せられたと同時に
犬夜叉は地面へと叩きつけられる

かごめ「あんたなんか…大っっっ嫌い!!!!!」

そう言い捨てて骨食いの井戸のある
場所へと向かう

ケンカを眺めていた弥勒達は
かごめの背中をじーっと見ていた
しかし弥勒達は気付かなかった…
かごめの瞳からかすかに涙が零れていたことを…

骨喰いの井戸…
それは犬夜叉とかごめの
運命の糸を結んでいる結び目…
その結び目が…
どんどんゆるくなっていくのを2人は知らない…

しばらく経ってからようやく犬夜叉は起き上がった
それを見た七宝が犬夜叉の肩へと乗り移り

七宝「ま〜た桔梗のことでケンカとは…
   相変わらず恋心がわからんやつじゃのーお前は!!」

っといつものように大人びた言葉を発する
そして七宝はすぐ身構えた
いつものパターンだとすぐ殴りかかる
それを予想した…
しかし犬夜叉は七宝の言葉に反応を示さず
七宝を放り投げその場から静かに立ち去る

七宝「どうしたんじゃ?あいつ…」

いつもと違う反応に七宝は戸惑った
弥勒と珊瑚もお互い顔を向かい合わせ
ふしぎな顔をする

犬夜叉は見てしまった…
かごめが…
泣いていたのを…

そのころかごめは自分の部屋にいた
ベットの上でうつぶせになってずっと考え込む
犬夜叉と…
桔梗のことを…

かごめ「バカよね…犬夜叉と桔梗の絆を知ってるっていうのに…」

涙を堪えながら想ったことを口に出す

かごめ「なんで…それでも一緒にいたい…なんて言ったんだろ…」

今になって心に決めた想いを悔む…
そして机の上に飾ってある一つの写真を見る
その写真には
御神木の前で立っている犬夜叉と
犬夜叉に腕組みしているかごめの姿が写っていた
かごめはそれを手にとり…
じっと眺める…
そして自然と涙が零れる
涙は写真の上に落ち
そこにしみを作る…

そして…
涙を振り切り
渾身の力でその写真を2つに裂いた
2つに分かれた写真を捨てて
そのまま孤独の殻にこもる

もう…

犬夜叉には…

2度と会いたくない…

そのころ犬夜叉は骨喰いの井戸の前にいた
かごめに会いに行くか行かぬか迷っていた
自分のせいでかごめを泣かせた…
その責任感を感じて謝りに行こうと想っていた
しかし今の状態で会えば返ってかごめを悲しませるかもしれない…
しかし会わないことには始らない… 
犬夜叉は意を決して井戸へと飛び込む
ふと犬夜叉は異変に気付いた
そして上を見上げる
上には青い空が広がっていた
井戸を通り抜けてない…

犬夜叉「どうしてだよ…」

井戸を通れない…
何故急に…?

犬夜叉「これじゃあ…かごめに会えねーじゃねーかよ!!!!!」

犬夜叉の声が辺りに響き渡る
しかしいくら声を大きくしても…
かごめには届かない…

運命の糸が…

解けた

=続く=

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「時の流れ〜永遠に 後編」   犬乃丸サマ
【再び結ばれた糸】

犬夜叉「どーなってんだよ!!!」

日がそろそろ沈む頃
犬夜叉が楓の小屋に急に入ってきて怒鳴る
中には弥勒達の姿もあった
犬夜叉がイキナリ怒鳴りかけたので少し驚いた様子でいた

弥勒「…なにがです?」

突然のことなのに
冷静な質問を弥勒は返した

犬夜叉「井戸を通れねーんだよ!!!」

弥勒を睨みつけてまた怒鳴る
流石に弥勒もこれには怯んだ
井戸が通れないという突然の出来事に
犬夜叉もかなり焦っているようだ

楓「法師殿達の話では…
  かごめと桔梗お姉さまのことでケンカしたそうじゃないか」

楓の言葉に犬夜叉は少し戸惑う

井戸を通れない原因はそれにあるのか?
と犬夜叉も少しは考えてはいた

しかし桔梗のことでケンカをしたのは
ここ最近に始ったわけではない
いきなりそうなったとは考えにくい

逆に言うと…
それが原因とは考えたくはなかった…
楓は犬夜叉が自分の言葉に耳を傾けていることを察し
再び話し始めた

楓「おそらく原因は…それにあるだろう」

楓「お前とかごめが井戸を通れるのは
  時を越えて出会うという運命なんだ」

犬夜叉は楓の言葉の一つ一つを聞き逃さなかった
自分が原因で井戸を通れなくなった
その原因が心を痛める

楓「わしの推測だが…
  井戸を通るには想いが繋がってなければ通れない」

楓「おそらく…
  今回の喧嘩で『会いたい』という想いが途切れたのだろう」

犬夜叉は驚いた
会いたいという想いが途切れた…
つまりかごめが犬夜叉と会うということを
拒否しているということだ…

オレと会うことを…
嫌がってる…?

犬夜叉はなにかが心に突き刺さる感じがした

いままでは喧嘩をしても井戸を通ることはできた
それはかごめが「会いたくない」と想っていても
心の奥底で「会いたい」という想いが存在していたということだ

それが今は…
心底「会いたくない」という想い…
完全に犬夜叉を拒否している

犬夜叉は何も言わず外に出て 
一目散に走り出した

楓達はただ
かごめに会えないという衝動が心に突き刺さった
犬夜叉の悲しい背中を見ていた

犬夜叉はなんの目的もなくただ走っていた
しかし気が付いたら
かごめとの想い出の場所…
御神木の前に来ていた
かごめとなんかあると…
必ずと言っていいくらいここに来る

このまま…
2度とかごめに会えない…

そう思うと息苦しくなる
犬夜叉にとってその心の傷はあまりにも大きすぎた

かごめはずっと自分の心の支えだった
その心の支えがいなくなったらどうなる?

心が不安定になり…
崩れていく…
今の犬夜叉はそんな状態だった…

いくらかごめを呼んでも…
かごめは2度とオレの前に現れない…

2度と…
想いは届かない…

〜現代〜

かごめは自分の部屋の窓から
ずっと御神木を見ていた

犬夜叉との想い出のある…
御神木を…

未練が残っているわけではない…
犬夜叉との想い出の記憶を辿っていた

しかしその記憶も今となっては苦しみに変えるだけ

こんな想い出…一刻も早く忘れたい
そう思っている

かごめ(でも…どうしよう)

かごめにも心配のタネがあった
かごめの右手の中には
四魂のかけらの入ったビンがある
このかけらがなければ
四魂のかけらは完全な四魂の玉にならない

しかし今更渡しにいけるだろうか?
今更みんなに会いに行くことができるだろうか?

答えは否

犬夜叉のいる戦国時代など…
行きたくない…

そう考えていると
四魂のかけらが突如激しく光りだした

かごめに…
なにか呼びかけているように…

かごめ(…犬夜叉に会いに行けっていうの?)

かごめは首を大きく横に振り
かけらの入ったビンをベットへと投げつけた
そしてまた御神木の方を向くと
その御神木の前には犬夜叉の姿があった
かごめは驚いた
御神木の前に犬夜叉がいるなんて…
今更連れ戻しに来たっていうの?
かごめの中には犬夜叉との再会の喜びなど感じなかった

追い払おうと御神木の前まで来た
しかしかごめはあることを思い出した
それは、瑪瑙丸との戦いの時だった
桔梗により、現代へ戻されたとき
居ないはずの犬夜叉が…
御神木の前にいた

あの時と…
同じだ
犬夜叉はいま…
戦国時代の御神木の前にいる

しかし犬夜叉は
自分の後ろにかごめがいることに気付いていない

ただ…
ずっとかごめの名前を繰り返しながら言っていた

かごめはずっと犬夜叉の背中を見ていた
かごめと会えない…
さびしそうな背中をずっと…

そして…
ベットの上にある四魂のかけらの光が消えると
それと同時に犬夜叉の姿が消えていった

犬夜叉が消えると…
自然とかごめの瞳から涙が零れてきた
かごめが頬に手をやると涙が指についた
そして自分が泣いていると認識した

どうして?
どうして会いたくも無い人を見て
涙が零れるの?
会いたくないんじゃ…ないの?
会いたくない…?
ずっとそう思ってた…

今は?
今もまだ会いたくないの?
ホントは…

犬夜叉に会いたいんじゃないの?

かごめは自分に呼びかけた
さびしそうで
孤独な犬夜叉を見て
心に決めたときのことを思い出した

『ずっとそばにいる』

そう…心に決めたはずだった…
犬夜叉に生きてて欲しい…
そう思ったはずだ

なのに…
どうして会いたくないなんて想ったの?
心に決めたことを…
どうして今更になって投げ出したの?

私は…
犬夜叉と一緒にいたい…

かごめはすぐに走り出した
自分の大好きな…

犬夜叉の元へ…

一度結ばれていた糸は解けた
しかし糸は切れたわけじゃない…
靴紐のように…
解けたらまた結べばいい
四魂のかけらは
犬夜叉とかごめの糸を
再び結んだ

強く…

強く…

2度と…

解けないように…

= END =

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