「喧嘩花咲く男女の仲」   さつきサマ
妖怪 「キィィィィ・・・」
百足妖怪が叫び声をあげる。
珊瑚の飛来骨をうけ、横っ腹に深い傷を負っている。
一行は今、とある山の中。
先日から村を暴れまわり、村に大きな被害を出している百足妖怪の退治を引き 受けたのだった。
大した妖怪ではなく、簡単に終わるだろう。
だが、この退治の終わりと共に、新たな戦いが始まることになる――

弥勒 「いまです!」
札で百足の動きを封じた弥勒が合図を送る。
犬夜叉「おぅ!風の――」
珊瑚 「飛来骨!」
ザンッ
妖怪 「ギャァ〜!!」
妖怪が最後の叫び声を上げ、倒れた。
犬夜叉「なっ・・・」
珊瑚 「かごめちゃん、四魂のカケラ、お願い。」
かごめ「わかった。」
かごめの手により、汚れていた四魂のカケラは輝きを取り戻した。
珊瑚 「さ、早く帰ろう。一雨きそうだ。」
弥勒 「ですね。今宵はあの村に泊めてもらいましょう。」
犬夜叉「珊瑚、てめぇ!!」
珊瑚 「なに。」
犬夜叉「俺の獲物を・・・」
珊瑚 「いつあんたの獲物って決まったのさ。」
犬夜叉「う・・・」
珊瑚 「あんた、昨日の怪我、まだ治ってないだろ?いらない体力使うんじゃないよ。」
犬夜叉「るせーっ!あれぐらい、どうってことねぇよ!」
珊瑚 「あ・・・ったく。雨降ってきちゃったじゃないか。雲母!」
小さくなった雲母は、珊瑚の胸に飛び込んだ。
雲母 「みぃ。」
珊瑚 「風邪引くといけないからね。」
犬夜叉「おぃ!」
珊瑚 「法師様、急ごう。」
弥勒 「はい。」
犬夜叉「おぃコラ!珊瑚!てめぇ、無視すんじゃねーよ!」
珊瑚 「なにさ。まだなにかあるの?」
犬夜叉「あるに決まってんだろ?!」
しばらく睨みあう二人。
かごめ「ふ、ふたりとも・・早く帰らないと、ずぶ濡れになっちゃうわ・・・」
珊瑚 「・・・・・・」
犬夜叉「・・・・・・けっ・・・」

帰り道、二人は一言も喋らない。
弥勒とかごめは、今までにないほどの空気の重さを感じていた。
七宝 「かごめぇ・・オラ、怖い・・」
弥勒 「我慢しましょう・・・」
かごめ「えぇ・・・」
珊瑚 「・・・・」
犬夜叉「・・・・」
二人は目も合わせぬまま山を下り、村にたどり着いた。
弥勒 「では、私は村長に、宿の交渉を・・・犬夜叉、珊瑚になにかしたら、承知しませんよ。」
犬夜叉「誰がするか、こんなやつに!」
珊瑚 「こんなやつで悪かったね!」
かごめ「まぁまぁ・・・」
珊瑚 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
珊瑚はくるりと向きを変え、歩いていく。
かごめ「さ、珊瑚ちゃん、どこいくの・・・?」
珊瑚 「・・ちょっとその辺散歩してくるよ。夕飯までには戻るから。」
かごめ「そう・・・」
珊瑚は行ってしまった。
かごめ「犬夜叉!なんであんなこと言うのよ!誰が倒したっていいでしょ?!別に。
     決まってるわけじゃないんだから!」
犬夜叉「るせー。あれは俺の獲物だったんだよ。」
かごめ「だから、いつ決まったのよ。」
犬夜叉「あれが現れたときからに決まってんだろ。」
かごめ「だから、決まってないってば。」
七宝 「はぁ・・・」

ザァ・・・
川の水が光る。
そよ風に揺れる木々の間から漏れる光が眩しい。
珊瑚 「はぁ・・・・ったく・・・」
珊瑚はひとり、大きな木の陰に座っていた。
犬夜叉の気持ちは分かっていた。
自分たちに、出来るだけ怪我を負わせたくなかった。
だから、全て自分が引き受けるのだ。
だが、今回は怪我をしていた。
本人は『大丈夫だ』、『平気だ』などと言っているが、その傷は、誰が見ても『平気』に見えはしない。
珊瑚はそんな犬夜叉に気を使い、とっととしとめたのだった。
珊瑚 (犬夜叉は、わかんないの?あたしの気持ち・・・)
    「はぁ・・・・」
本日何回目かのため息をつく。

犬夜叉「けっ・・・・」
木の上に寝転がり、機嫌悪そうにしているのは犬夜叉。
珊瑚の気持ちは分かっている。
怪我が治りきっていない自分に、無理をさせたくなかったのだ。
だが、珊瑚は一応女。
男が心配されるなど、みっともない。
だからつい、キツイ言葉を言ってしまうのだった。
理由はそれだけではない。
珊瑚に、弥勒に、かごめに、七宝に、怪我をしてほしくないのだ。
傷つくのは己だけでいい。
そう思っているからこそ、手を出した珊瑚を許せないのだった。
犬夜叉(アイツには、俺の気持ちがわかんねぇのかよ・・・)
    「はぁ・・・」
こちらも本日何度目か。

かごめ「ねぇ、弥勒様ー。あの二人、なんかヤバイわね・・・」
弥勒 「はぁ・・・両方とも、かなり子供ですから・・・」
かごめ「どっちかが先に、ごめん、って言えば・・って無理よねぇ・・」
弥勒 「でしょうな・・・終いには血をも見るやも知れませんな。」
かごめ「えぇ?!はやくやめさせないと・・・」
弥勒 「ですな。」

珊瑚 (そろそろ夕飯かな・・・帰りたくない・・・)
そんなことを考えながらも、ゆっくり立ち上がる珊瑚。
相変わらず重たい飛来骨を抱え、歩き出す。

犬夜叉(腹減ってきたな・・珊瑚のやつ、ちゃんと帰って来るんだろうな・・・)
木の上の犬夜叉も、下に飛び降りると、のろのろと帰っていった。

珊瑚 「ただいま。」
かごめ「あ、珊瑚ちゃん!おかえりなさい・・あのね、犬夜叉のこと――」
犬夜叉「おぃ、腹減った。」
かごめ「犬夜叉!帰ってきちゃったの?」
犬夜叉「悪いかよ。」
珊瑚と犬夜叉の視線がぶつかった。
珊瑚はすぃと、瞳をそらす。
犬夜叉「けっ・・・」
女将 「皆様、夕飯の仕度が整いました。流水の間にどうぞ。」

女将が案内した部屋は、『流水の間』と呼ばれるところだった。
ふすまには滝が描かれ、とても心が和む部屋だ。
普通なら。
夕飯中も、二人は険悪なムードのまま。
だがそれは、犬夜叉の行動により、もっとエスカレートすることに。

今、ゴハンのおかわりを入れる釜は、珊瑚の隣にある。
普通ならば、皆珊瑚に頼むのだが、今日の犬夜叉は、
犬夜叉「おぃ、かごめ、飯。」
かごめ「え、あ、うん・・・」
かごめが釜に手を伸ばしかけたとき――
ダンッ
珊瑚が勢いよく立ち上がった。
珊瑚 「あんた、そんなにあたしがイヤ?!なら、出て行かせてもらうよ。
     もうあんたの顔なんか、一時も見たくないね。」
珊瑚は乱暴に戸を開けた。
犬夜叉「けっ勝手にしやがれ・・俺も、おまえとは口を利かねーからな!」
珊瑚 「好きにすれば。」
珊瑚は壁に立てかけてあった飛来骨を抱え、出て行った。

珊瑚 (あ〜〜ったく、ムカつく。犬夜叉のヤツ・・・)

犬夜叉(珊瑚の野郎、怒鳴らなくてもいぃだろーが。向こうが謝るまで、俺は一切あいつとは喋らねーぞ。)

か・弥 「はぁ〜〜」

?!
珊瑚 「妖気!」
外に出てから数分後、珊瑚は妖気を察知した。
そして、妖気に向かって駆け出した。

犬夜叉「?!妖気だ!行くぞ!」
弥勒 「はい!」
犬夜叉たちも向かう。

最初についたのは珊瑚。
妖怪は、昼間倒したものと同じ、百足妖怪。
たぶん、昼間の家族かなにかだろう。
珊瑚 「飛来骨!」
妖怪 「ぎゃぁ!」
妖怪は上下二つにわかれ、死んだ。
珊瑚 「ふぅ・・・・楽勝だな・・・」
だが妖怪は一匹ではなかった。
珊瑚の背後から近づき、襲い掛かる。
珊瑚 「?!―――」
ザンッ
犬夜叉「珊瑚!無事か!」
珊瑚 「犬・・夜叉・・」
犬夜叉が間一髪のところで現れ、散魂鉄爪により、妖怪を倒した。
珊瑚 (来てくれたんだ・・・)
珊瑚の顔が緩む。
珊瑚 (っと・・・いま、喧嘩してたんだよね・・)
珊瑚は背筋を伸ばし、再び戦闘態勢に。
気づけば珊瑚と犬夜叉の周りには、たくさんの百足妖怪が。
犬夜叉「囲まれたか・・・・・おぃ珊瑚!そっちはおまえに任せた!」
珊瑚 「あたしとは口利かないんじゃなかった?」
犬夜叉「るせーっ!おまえこそ、俺の顔みねぇんじゃなかったのかよ!」
珊瑚 「そうだったね・・」

かごめたちが追いついた。
七宝 「こら!二人とも!こんなときまで――ふぎゃっ!」
かごめが七宝の口を手でふさいだ。
かごめ「いいのよ、七宝ちゃん。」
弥勒 「もう心配無用です。」
七宝 「???」

犬夜叉「とりあえず・・」
珊瑚 「ここはひとまず休戦だね・・・」
犬夜叉「行くぞ!」
珊瑚 「あぁ!」
―ザンッ―
―ギャァ!―
二人は見事なコンビネーションで、妖怪をなぎ倒す。
見る間に妖怪の数は減り、数えられるほどになった。
犬夜叉「鉄砕牙!」
犬夜叉は目前の敵をなぎ払った。
珊瑚 「犬夜叉!後ろ!」
犬夜叉「?!散魂鉄爪!」
珊瑚 (ほ・・・・)

とうとう妖怪は最後の一匹に。
犬夜叉「こいつは譲らねーぞ!」
珊瑚 「どうぞお勝手に。」
犬夜叉「風の傷!!!」
妖怪は跡形もなく消し飛んだ。

犬夜叉「おぃ、珊瑚。ちょっと来い。」
珊瑚 「ん?なによ・・・」
退治終了後、再び村に戻った一行は、すぐに布団に入り、翌朝を迎えた。
朝食後、犬夜叉は珊瑚を呼び出した。

犬夜叉「その、だな・・・・・・悪かった。」
珊瑚 「へ・・・」
犬夜叉「あんだよ、その間の抜けた顔は!」
珊瑚 「ぃや・・・その・・あんたから言ってくれるなんて思ってもみなかったから、さ・・・」
犬夜叉「けっ・・」
珊瑚 「あたしこそ、ゴメン。なんか、じっとしてられなくてさ・・・」
犬夜叉「・・・・」
珊瑚 「あたしは、皆が大好き。だから、少しでもたくさん一緒にいたい。
    けど、今のあたしの力では、皆の中に入っていけない感じがするんだ。
    だから、自分の居場所は自分で作らなきゃって思って・・・」
犬夜叉「珊瑚・・・・・・・俺も、そうかもしれねぇ・・・」
珊瑚 「ぇ・・・・」
犬夜叉「今は、当たり前のように、かごめや、おまえらがいる。
    けどよ、俺は半妖だろ?だから、ちょっと突付かれたぐらいでは当然くたばらねぇ。
    けど、おまえらは人間。俺の何倍も、弱い。だから、俺が盾になっておまえらを守らねぇと、
    なんか、大事なものをまた無くしそうで、怖い。」
珊瑚 「犬夜叉・・・・なんか、うれしい・・・」
犬夜叉「な゛。なにが嬉しいんだ!なにが!」
珊瑚 「だって・・犬夜叉、あたしたちのこと、【大事なもの】って言ってくれただろ・・・
    いままで、そんなこと言われたことないからさ・・・///」
犬夜叉「////けっ・・・お、俺はもう行くぞ!ちゃんと言ったからな!」
珊瑚 「・・・ね、待ってよ。あのさ、一緒に、歩かない?」
犬夜叉「なっ・・・」
珊瑚 「たまには――///っ」
珊瑚は目を見張る。
自分の目の前には差し出された犬夜叉の手が。
嬉しいような、恥ずかしいような気持ちで、珊瑚は犬夜叉の手をとった。
そしてそのまま、二人は歩いていく。
その後、かごめたちに見られ、何を言われ、何をされたかはご想像にお任せする。

END
あとがき
・・・・・・犬と珊瑚ちゃんが、手を繋ぐ?!
ありえねー。(>_<)
アホな小説を書いてしまってゴメンナサイ。

<<トップページに戻る

▲このページの上へ