「あいらぶゆうと言う言葉」   清香サマ
ここは戦国 武蔵の国
犬夜叉達一行は 休息の為、楓の村へ帰ってきていた
近くに邪気を感じる事もなく 楓の家で骨休めしていた犬夜叉にかごめが話しかける
「ねえ 犬夜叉」
「なんだ?」
床に寝転がったまま犬夜叉は答える
「あの・・・お願いが・・・あるんだけど・・・」
「なんでぇ?急に?」
「たいしたことじゃ・・・ないんだけど・・・」
かごめはうつむき、言葉を詰まらせる
「なんだよ、言えよ」
「あのね・・・」
「おう」
「アイ・ラブ・ユーって 言ってみて・・・」
うつむいたまま、恥ずかしそうにかごめは言う
「はぁ?なんだそりゃ?」
突然の申し出に犬夜叉は怪訝そうな顔になる
かごめはその場で顔を上げると犬夜叉のそばに寄ってきた
「犬夜叉お願い・・・」
かごめは、犬夜叉の顔を間近で覗きこみながら懇願する
犬夜叉は、かごめの黒い瞳と彼女から漂う甘い香りに 思わず顔を赤らめた
「い、言えばいいんだろ」
犬夜叉は、胸の高まりを打ち消すかのように顔を反らし、ぶっきらぼうに答える
「あ・・・あい・らぶ・ゆう・・・これでいいのか?」
訳がわからないまま犬夜叉は言う
「きゃっ・・・」
犬夜叉が言った瞬間、かごめは顔をぱぁぁっと赤らめた
「??な?なんだよ」
(なんだ?今のかごめの態度?)
突然顔を赤らめ、頬をおさえるかごめに犬夜叉は面食う
「なんでもない・・・犬夜叉ありがと!洗濯してくるね」
顔を赤く染めたかごめは満足そうに微笑むと、外へ駆け出して行った
「なんだぁ・・・かごめのやつ」
犬夜叉は、そんなかごめの姿を呆然と見ていた

しばらくして 村の見回りを終えた 弥勒、珊瑚と二人について行った七宝が帰ってきた
弥勒は外を見ながら尋ねる
「犬夜叉・・・何かあったのですか?先ほどかごめ様をお見かけしましたら
なにやら顔を真っ赤にされてたようなのですが」
「それに・・・なんだか嬉しそうだったよね?」
珊瑚が続ける
「けっ、おれも訳わかんねーよ かごめの奴、いきなりおれにあいらぶゆうとか言っ
てくれって頼みやがるんだ」
床に寝転んだままの犬夜叉は答えた
弥勒は犬夜叉の方を向き訊ねる
「それで犬夜叉・・・言ったのですか?」
「まあ・・・意味わかんねーけどな」
「そのあいらぶゆうって・・・何なんだろうね?」
珊瑚は首を傾げる
「さーな、あいつ[むーど]とか、時々訳わかんねー事言ってるからな」
今まで部屋の隅で話しを聞いていた七宝は、突然何かを思い出したように口を開く
「犬夜叉・・・!おらその言葉知ってるぞ!」
「七宝、あいらぶゆうの意味を知っているのですか?」
弥勒が七宝に尋ねる
「どーゆー意味でい?」
犬夜叉は身を起こす
皆の前で胸をはった七宝が、以前聞いた言葉の意味を説明した
「おほん・・・おらは前にかごめに聞いたことがあるぞ、あいらぶゆうと言うのはの
たしか異国の言葉で、私はあなたが大好き!という意味だったぞ!」
「んなっ・・・なにぃぃぃっ!!」
驚いた声の犬夜叉が叫んだ
「へぇ・・・あなたが大好き・・・って そうゆう意味だったの・・・」
珊瑚は関心したように言う
「ほほう、かごめさまもやりますな」
弥勒は腕を組むと大きくうなずく
そして弥勒と珊瑚、七宝の視線は、犬夜叉へ向けられた

犬夜叉は これ以上ない程の真っ赤な顔をしていた、手はぷるぷる震えている
「か・・・かごめ・・・あいつ・・・!」
(おれにそんな恥ずかしー言葉 言わせやがって!)
「さっき言ったこと取り消してやる!」
真っ赤な顔で今にも犬夜叉は外に飛び出そうとした 
「おまちなさい!」
鋭い声で弥勒は犬夜叉を呼び止める
「なんでぇ!弥勒!」
犬夜叉は苛ついた顔で振り返った
弥勒は訊ねる
「犬夜叉・・・おまえはかごめ様の気持ちを少しは考えたことがあるのか?」
「な、なんでぇ いきなり・・・」
弥勒の言葉に犬夜叉の態度はひるむ
「異国の言葉でもいいから かごめ様はおまえに好きだと言って欲しかったのではないのか?」
弥勒は犬夜叉に問いかけた
「なんだよ、そりゃ?」
訳が分からないような顔をして、犬夜叉は聞き返す
弥勒は一つため息をつくと続けた
「普段から かごめ様はおまえと桔梗さまのことでいつも傷ついているのだ 
かごめ様とて聖人君子ではない おまえのそばにいるのに不安で苦しい時もあるのだろう
おまえに好きだと言ってもらうことで 少しでもそんな気持ちを和らげたかったのではないのか?」
そう言うと弥勒は犬夜叉に真剣な眼差しを向ける
「そうだよ犬夜叉、法師さまの言うとうりだよ!」
「そうじゃそうじゃ!」
珊瑚と七宝が口々に言う
「う・・・うるせぇっ!おれは悪くねぇっ!」
三人から責められ、いたたまれなくなった犬夜叉は外に飛び出した
「またんか!犬夜叉―!」
七宝が犬夜叉の後を追う
部屋の中に弥勒と珊瑚が残された

「やれやれ・・・犬夜叉も素直じゃないですな」
ため息をつきながら弥勒が言う
「本当、正直になればいいのに・・・」
珊瑚もため息をつく
そこへつぃと弥勒が近づいた
「珊瑚・・・私はいつも自分の気持ちに正直ですよ・・・」
「ほ・・・法師さま?」
弥勒の顔が近づき、珊瑚の顔が赤らむ
弥勒はいつものように珊瑚の手をとり握りしめた 
そして、お決まりのセリフを吐く
「珊瑚・・・私の子を産んで・・・」
「・・・言わんでいいっ!!」
部屋中に、淡い期待を外された珊瑚の怒声が響いた・・・

その頃 犬夜叉は村の中を歩いてた
(なんでぇ・・・みんなおれを責めやがって・・・)
憮然とした顔で腕を組み、かごめがいつも洗濯をしている村はずれの小川へ向かう
小川に着くと かごめはまだ洗濯をしていた 犬夜叉には気づいていない
バシャ、バシャと音をさせ楽しそうに水と戯れている
(かごめ、なんか楽しそうだな・・・おれが言った言葉が嬉しかったのか・・・?)
犬夜叉は眩しそうにかごめをみつめる
「やっぱ・・・ちゃんと言わねーと不安なのか・・・?」
犬夜叉はつぶやいた
「あれ 犬夜叉?」
姿に気づいたかごめが声をかけた
「心配して来てくれたんだ」
顔の水滴を手でぬぐい微笑む
「ま、まあな・・・」
かごめの姿に、心を奪われたように見とれていた犬夜叉は、慌てて視線を逸らす
「待ってね もうすぐ終わるから」
「ああ」
犬夜叉は川のほとりに腰をおろした

やがて洗濯を終えたかごめが 犬夜叉の隣に腰掛けた
「いい天気・・・気持ちいいねー」
「まぁな・・・」
(好き・・・なんて恥ずかしくて言えねぇよ・・・)
犬夜叉は心の中で葛藤する
「ね、犬夜叉明日も晴れるかな?」
そんな犬夜叉の気持ちを知らないかごめは、のんびりと空を見上げた
「そうだな・・・」
(・・・言ったらかごめ・・・喜ぶ・・・かな・・・?)
犬夜叉の心の葛藤は続いている
「どうしたの?さっきから犬夜叉ずっと上の空だよ?」
かごめは首を傾げて犬夜叉の顔をのぞきこんだ
「なんでもねぇ・・・」
(どーすりゃいいんだよ・・・)
犬夜叉はため息をついた

「?」
かごめは不思議そうに犬夜叉を見ていたが しばらくして 
ゆっくり犬夜叉に近づくと、肩に寄り添った
「かごめ・・・」
かごめのぬくもりを肩に感じ、犬夜叉の胸が高なる・・・!
(もし・・・言うなら・・・今しかねぇ!!)
犬夜叉はそう決意した

「かっ、かごめ・・・」
犬夜叉はかごめの両肩に手を置き 向き合う姿勢をとる
「どうしたの?」
かごめは突然の犬夜叉の行動にキョトンとする
犬夜叉は大きく息を吸い込んだ
「い、一度しか言わねーから よ、よく聞けよ おれは・・・おまえのこと・・・すっ・・・」
「す?」
かごめは聞き返す
「す・・・・・・」
犬夜叉が口を開いたその瞬間---------------------------------

「かごめー!」
七宝の声が辺りに響きわたる
「あ、七宝ちゃんだ」
かごめは慌てて犬夜叉から離れた
七宝が息を切らせながら駆け寄ってきた
「かごめ 大丈夫か?犬夜叉にひどい事を言われておらんか?」
「え・・・ひどいことって?」
かごめは七宝に訊ねる
「おらが犬夜叉にあいらぶゆうの意味を教えてやったら 犬夜叉のやつ
真っ赤になって怒って楓バアの家から出て行きおった」
「しっ七宝ちゃん・・・犬夜叉に話しちゃったの?」
「そうじゃ いかんか?」
「いけないって訳じゃないけど・・・」
かごめの頬が赤く染まった
七宝は犬夜叉をキッと睨みつける
「こりゃ!犬夜叉!お前も男ならかごめに一度くらい好きだと言わんかい!」
「しっ・・・しっぽうちゃん!?」
かごめは更に真っ赤になり七宝を押しとどめようとする
しかし、七宝はきつい声でなおも続ける
「まったく・・・好きのひとつも言えんとは・・・しょうがないやつじゃ・・・え・・・?」
話の途中 七宝は犬夜叉の姿にぎょっとする
犬夜叉の顔は怒りでひきつり、拳は震えていた
「し〜っ〜ぽ〜う・・・てめえ・・・!」
(これからという時に・・・邪魔しやがって!!!)
ガツン!!
いつもより数倍強く 犬夜叉の拳が七宝の頭に炸裂した
「びえぇ〜〜〜〜!!」
七宝の頭に大きなコブができる
「ちょっと!犬夜叉いきなり何するの!ひどいじゃない!」
慌てて七宝を抱き寄せ、かごめは言う
「けっ!うっせえっ!」
(おれの一大決心をふいにしやがって!!)
「犬夜叉・・・もう!」
かごめは頬をふくらます
「・・・ったく誰が好きなんて言うかよ・・・」
そう言い犬夜叉はぷいと横を向いた

「犬夜叉・・・おすわりぃぃっ!!!!」
「ふぎゃ!!」
突然、かごめが唱えた言霊で、犬夜叉の体はみしりと地面にたたきつらけた
「犬夜叉の・・・バカ!!」
(私の気持ち、何にもわかってないんだから!)
かごめは地面にめりこんだ犬夜叉に冷たい視線を向ける
「七宝ちゃん行こ!」
そして七宝を抱いてその場から立ち去った

「そういえば・・・犬夜叉あの時、何か言いかけてたな、なんだったんだろ・・・?」
歩きながらかごめはつぶやく
「まっ・・・いーか・・・」
(どうせたいしたことじゃないだろうし・・・)
ため息をつくと かごめはそのまま楓の家へ帰っていった

一方、犬夜叉は、まだ川のほとりでうずくまっていた
「なんで・・・こうなるんだ・・・」
犬夜叉の嘆きはむなしく、川のせせらぎと共に消されていった・・・。

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