「HANABI」   優サマ
夏の終わり頃。
現代で、受験勉強に励むかごめがいた。
今日も朝からずっと勉強づくし。
一時手を止めて、休憩をした。
「ふぅ。最近犬夜叉が邪魔しに来ないから、勉強はっかどるぅー。
でも、今頃みんな……なにしてるのかな……」
「ただいまー」
下からママの声がして、かごめは居間へ来た。
「あ、おかえり、ママ」
「お勉強捗ってる?」
「それなり……大体……まあまあ……ぼちぼち」
「今ね、ご近所の人から聞いたんだけど今夜お祭りがあるらしいの。
花火大会もあるって。これね」
ママは貰ってきた花火大会のチラシをかごめに見せた。
「今年の夏休みは勉強ばかりでどこにも遊びにいかなかったでしょ?
 少し位いいんじゃないかなって。ほら、あの子と行ってきたら?」

かごめは急遽、戦国時代へ向かい、犬夜叉たちに訳を言った。
「――っていうことなの」
「っと申しましても……私と珊瑚と七宝らはかごめ様の国へは行けませんし」
「そうだね」
「っという事はじゃ……」
みんな犬夜叉のほうを見た。
「犬夜叉、かごめ様と行ってきなさい」
「おら達の代わりに行け、犬夜叉」
「久々に楽しんできなよ」
犬夜叉は適当に答えた。
「まぁ、別にいいけどよ」
「本当!?それじゃあ今すぐあっちへ行こ!
弥勒様、珊瑚ちゃん、七宝ちゃん、ごめんねー」
「いいよ!いっぱい楽しんできてね」

かごめと犬夜叉は、現代にきた。
「犬夜叉、座って待ってて!」
犬夜叉は言うとおりに居間で、座って待つことにした。
しばらくして、かごめが戻ってきた。
「お待たせ!」
犬夜叉はかごめの姿を見て、ドキっとした。
いつも制服を着ているかごめが、浴衣を着ている――。
「そ……、それじゃ、さっさと行こうぜ」
「あ、待って。そんな姿じゃ怪しまれるわ。
えーっと帽子……ママ、帽子ない?草太のでもいいから」
帽子探しの為、また何分か待たせれた。
「あった!はい、犬夜叉。しっかり被ってよ」
「何でこんなもん被らなきゃいけねんだよー」
「そりゃー、犬耳を隠す為でしょー。それじゃ、行こ!」

かごめと犬夜叉は色々話しながら、お祭り会場へ行った。
お祭り会場へ着くと犬夜叉は全てが不思議に思い、キョロキョロする。
「ちょっと……、そんなにキョロキョロしないでよ」
「だってよお。見たことないもんばかりだしよー。げ、何だあれ。すっげー煙ってるぞ」
「生ものだから、焼いてるのよ。ねぇ犬夜叉、かき氷食べよ!」
「かき……なに?」
かごめは自分と犬夜叉の分のかき氷を買って、持ってきた。
「はい、犬夜叉!食べてみて!」
犬夜叉は一口食べてみた。
「冷てぇ〜……。あ、でもっ」
「おいしいでしょ?」
その時、かごめは焦った。
由加や絵理やあゆみ。
それに他の友達がこっちに歩いてきている。
「犬夜叉!こっちにきて!」
かき氷にかぶりつく犬夜叉を引っ張って、川沿いまで行って隠れた。
「何だよ、かごめ!」
「友達がいたの!」
「別にいいじゃねえか」
「よくないわよ〜。だってみんな、あんたの事……」
かごめはいきなり黙り込んだ。
「何だよっ」
いくら相手が犬夜叉でも、
日ごろ話してること言ってしまったらいくら何でも可愛そうだと、かごめは思った。
ややこしい話を止めて、話題を変えた。
「いいの。この後ね花火大会があるの」
「花火大会?」
「とっても綺麗なのよ!
 去年が丁度この川の向こう岸だったから、今年も同じだと思うわ。それまで待っておこ!」

暫しそこで待ってると、花火を見ようという人が沢山集まってきた。
「へえ〜、すげー人だな」
「みんな今日の花火を楽しみにして来てるんだもん」
まもなく、花火大会が始まった。
紫、ピンク。薄い黄色、青色など綺麗な花火が次々と打ち上がる。
時に、ひし形やハート形の花火も打ち上がる。
「あれが花火ってのか。お前の国は本当不思議だよなー」
「毎年あるの。今年は行けるか不安だったけど……犬夜叉と来れてよかった。
 見て!紫から青に色が変わった!きれーい!」
年に一度この地域で行われる花火大会――。
苦しい命懸けの旅のことなんか、花火の音と共に吹き飛んでしまう感じがする。
「こんなの……あっちじゃ見られねえ。弥勒も珊瑚も七宝も連れて来られたらいいのにな」
一時間の花火で、最後のフィナーレ。
綺麗な花火が次々とあがる。
空高く、特大花火が、花のように、大きく、大きく夜空に広がる。
そして花が萎んだみたいに、花火は縮み、そして消えた。
かごめも犬夜叉も、他の観客も絶句してしまう。
こうして、この年の花火大会は終わった。

「ただいま!」
家へ戻ってきた、かごめと犬夜叉。
「おかえり。どうだった?花火大会は」
「もう凄かったよ。ねっ、犬夜叉」
「そう、良かったわね。ねえ犬夜叉くん、今日はもう遅いし、家に泊まっていったら?」
ママは優し気に言う。
「そうしなよ、犬夜叉」
「一緒にお風呂入って、一緒に寝ようよ、犬の兄ちゃん!」
かごめからも草太からも勧められ犬夜叉は一晩、泊まることになった。
「すぐにご飯とお布団の用意するわね。座って、ゆっくりしててね」
もう間もなく日にちが変わろうという時、いつもは滅多に寝ない犬夜叉が、
かごめの部屋へ来るとスッと眠りについた。
かごめはまた犬夜叉が見せてくれた寝顔を、じっと見つめる。
「今日は楽しかったね。また来年、行こうね。
今日の事は、あたし達だけの心の中にしまって……また明日から頑張ろうね……」

そして翌日はまた、過酷な旅を続けた。

―END―
あとがき
短編、第一弾です。
昨年、中学校の友達と地元の花火大会に行って、実際花火を見たとき思いついたモノです。
今更送るのも……少し季節外れですけどw
とあるサイトにも投稿しましたが、新たに再編集し、こちらにも送りました。
如何でしょう?w

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